「恋ってね……実は、私にも分からない」
「え」
でも、恋をしないと父さんとは結婚できないんじゃ?
「あ、頭で考えても分からないって意味ね」
僕の考えていることが分かったのか、母さんが付け加える。
「頭で考えず、心で考えるの。考えるな、感じろ、ってやつ?」
「感じる……?」
感じる、というのも、いまいち分からない。
「愛と恋は紙一重。葵、あなたは、その相手に何かをして欲しい?してあげたい?」
思い浮かぶのは、朱架の笑顔。
美しくも儚いその笑顔を、守りたいし、僕に向けて欲しい。
思っていること、全て打ち明けて欲しい。