味噌汁をかき混ぜる母さんの背中に、声をかけた。



「恋って何?」



__カシャン…



普通に尋ねたのに、母さんの手からおたまが落ちた。


味噌汁がこぼれたのにも関わらず、僕を驚きの眼差しで凝視している。



「葵……もしかして、好きな子できた?」


「わからない。けど、知りたい」



そもそも好きっていう感情が分からない。


好きって何?恋って何?


僕がコーヒーを『好き』と思うのとは違うの?



「そっか……葵も、そんな年かぁ…………」



ふふっと笑った母さんは、床に落ちたおたまを拾って水ですすぐ。


そしてまたかき回しながら、ゆっくりと話し始めた。