───数ヶ月後。
「……寒」
寒さにかじかむ手を、コートのポケットに突っ込む。
あるアパートの階段の下で、壁にもたれかかりながらマフラーに顔をうずめた。
寒い、寒すぎる。
もうすぐ春が来るなんて思えない寒さだ。
「葵くーん!」
頭上から声がして、顔を空に向ける。
朱架が、僕に向かって階段の上から手を振っていた。
カンカンと音を立てて鉄の階段を下り、彼女は僕のところに駆け寄ってきた。
「ごめん葵くん…遅れちゃって……」
「うん、遅い。かなり待った」
「え……」
悲しそうな顔をした朱架が面白くて、フッと笑う。
「嘘だよ」
「へっ!?…良かったぁ……」
ホッと胸を押さえる朱架。
素直で、可愛くて。
僕の自慢の彼女だ。
「行こう」
「うん!」
学校に向かって、歩き出す。