その日、家に帰ると


(こんなボロアパートの前にリムジン?不釣り合いじゃない。)


そのリムジンを遠くから眺めていると


「咲原すみれ様でございますでしょうか」


すらっとした長身で、スーツをびしっと着こなし、鉄のフレームのメガネをかけた男性が私に声をかけてきた


「はい、そうですけど…?」


「おかえりなさいませ。私の主人の氏野次郎はご存知ですよね?」


深々と体を二つ折りにした彼は、私にそう問いかけてきた。


確かに氏野次郎は父の友人でよく家に来ていた。


小さい頃から仲良くしてもらっていた私は氏野のおじさんと呼んでいる。


「その方より、貴方様をお迎え上がりますよう、申しつかりましたので。」


その男性は風原と名乗り、両親が他界し、一人暮らしの私を見かねて住まわそうとしてくれた氏野のおじさんの話を聞いた。