「…………。」

上を見上げる。

“サァァァ……。”

優しい風が身体を包んでくれる。
眼を閉じて願う。
亮が、いますように。
遠藤亮が、笑ってくれますように。

「よしっ。」

広い方へと足を踏み入れる。
人は見当たらない。
最後の望みとして振り返る。

「…………。」
「あ………。」

驚いた亮の顔が見えた。
亮は、携帯片手に。
あたしは、目を見開いて。

「…………こんにちわ。」
「うす。」

どうもぎこちない雰囲気。
どうしたら良いんだろう……?

「友達と、弁当?あの、亜紀と。」
「…………ううん。」
「じゃあ気晴らし?」
「…………ううん。」
「そっか。」

話が途切れてるのは、アタシのせい?
会いに来たくせに、嫌だな。

“カシャン。”

「あ。」

亮の携帯が落ちる。
開いたままで小さなプラスチック片が飛ぶ。
散々な状況。

「ひ、拾わなくて良いから!!」
「…………うん。」

拾わない。
拾えない。
ゴメン、亮。
近づけない。

「千尋。」
「ん、ん?」
「一緒に食う?弁当……。」
「うん。」

どうもぎこちない、あたし。
ただ横にいるだけ。