「姉ちゃん、この服良いんじゃね?」

白いスケスケのTシャツだけで持ってくる弟。

「わあセクシー。って……」

“ガツン!!”

弟に思い切りグーパンチ。
ったく盛りの付いたガキがっ……。

「痛いぃ~。」
「ぶりっ子!!」
「男だもん。」
「じゃあオネエ?」
「何だよ?!!」
「なぁによぉ!?」

思い切りにらみ合っていると、お母さんが来た。白くてふわふわしたカーディガンとピンクのTシャツを持ってきている。チェックのスカーフが合いそうなイメージ。

「どうこれ?可愛いでしょ?」
「……うん。」
「似合うんじゃね?」
「着てみても良いかな?」
「良いに決まってるでしょ~。」

試着室に入って着がえ始める。よく見なくたって寸胴な体つき。
……嫌いだな、アタシの身体。

「…………。」

『千尋っ。』

彼の笑顔が何度も頭を過ぎる。
そして必ず、あの声と風景。

『……遠藤。』

耳が痛い。馬鹿みたいに悩んじゃって一ちょ前に。何だか、あほらしく思えてきた。

“シャーー。”

「お母さん、どうかな?」
「…………あら。」
「え、やっぱり、変かな……。」
「ううん、凄い似合ってるわよ。」
「本当?」
「ええ。」

あたし、綺麗になりたい。