紙袋を抱き寄せて静かに息をしていた。胸の鼓動を押さえつけるように、力を入れていた。

「ったくよー、マジあいつまたサボりやがって、何様だよ。RE。」
「いや、何か倒れたらしいぜ。風邪こじらせたとか。まああいつも人だったってことだな。」
「………………?」

風邪?

「あのっ!」
「んぁ?あ、アンタあいつの連れじゃん。」
「何か用?」
「風邪って、何処に居るんですか!?」
「ほ、保健室だけど………、知らなかったの?」

不思議なものを見る目であたしを見る二人の先輩。一回だけお辞儀をして、あたしは走って保健室に向かった。

「何なんだろうな、あの子。」
「さあ………?」
「さ、準備準備。」


『タッタッタッタッ。』

音の聞こえない保健室前。息を切らしてあたしはドアを見つめていた。

「はぁ、はぁっ………。」

深呼吸を幾度か繰り返して息を整えた。れん君が驚いてしまわぬように。

『カラカラカラ。』

ふと感じたあの不安は、今でもはっきり覚えてる。涙を流したあの話を、今もはっきり覚えてる。

「………………。」

音を立てないように1つだけ使われているベッドに近付いた。君が起きてしまわぬように、そっとカーテンの中を覗いた。

「っ………………。」

あの日早起きして作ったお弁当を、君が口にすることはなかった。
あの日寝ている君に、君のとなりにいた人に、注意なんてできなかった。

「遠藤………。」
「………………!」

固く目を瞑っても、寝ている君がキスされている場面が消えることはなかったんだ。


『ザーーー!!』

大粒の雨が体を濡らす。頭、頬、肩の順に体を湿らせては重さを増していく。拭いてくれる人は、あたしの隣にはいなかった。