“カキン。”
誰かの打った球が空を舞う。
何時の間にか目で追ってしまう人の動き。
そんな物に、違和感を覚えた。
こんなところ、嫌いだったはずなのに。
どうして輝いて見えるんだろう。
そもそもどうしてここに居るんだろう?
ああ、あの日もこう見えていたのか。
『お母さん、アタシここ入りたくない。』
『ワガママ言わないの。受かっちゃったんだからしょうがないでしょう?断れないの、ここの受験は。』
『どうしてこんな所受けさせたの!?』
『千尋!』
最初は嫌だった。今と同じ。
でも……
『キャーー。』
『お前ヘッタくそだな~。』
楽しそうな空気が、輝いて見えていた。
柔らかい、雰囲気が流れていた。
『あ、今回の受かった子?』
『え、あ、はい。』
『楽しいよ!一緒に楽しもうね~?』
そう、輝いて見えていた。
今じゃ……
『うわ、RE。』
『マジ意味分かんないんだけど~。』
黒い部分ばかりが見える。
悲しいな、そう思う。
「遅いな……、れん君。」
『後でな。』
君の言葉を、信じていたよ。