魁斗は優しい。
そんなの知ってる。
でもね、優しいからって何もかもうまくいくと思ってんの?

溜息を吐いて相手を見つめるが、魁斗は明るい顔をしていた。
確かに売り込むチャンスだけど、それは、私を苦しめることになるんだよ。
なにか恋人設定だよ。
愛美は確かに今人気で可愛いシンガーソングライターだと思う。

あぁ、何くだらないこと考えてんだろ。
仕事と割り切らなきゃいけないことぐらい分かってるのに。

「ごめん」

安曇さんもきっと、いや、私より苦しい思いをしてたんだろう。

「なにが?」

そう言って微笑んでくる魁斗。
そして、私の手を握ってくる。
周りは人混みで、きっと魁斗のファンもいるはずなのに。
堂々と魁斗は私と歩いてくれる。

ねぇ、私、自信持ってもいいのかな?