私は相手の腹を蹴った。
でも、あまり怯まない。
相手も殴りかかってくる。
髪の毛を掴まれて引っ張られる。痛い。
床に投げ飛ばされて、みんなの方に飛んでいく。
悲鳴が飛び交うその中からガラスのコップが飛んでくる。

「いってぇ」

頭を腕で庇ったから、腕を怪我してしまった。
血が流れる。
なんだか、体が自由に動かない。
恐怖なのか、それとも…。








「唯、唯っ!!」

名前を呼ばれて起きてみると足が痛い。
足には包帯が巻かれていて、なにか怪我をしたことを物語っている。
そして、消毒の匂いと白い壁。
きっとここは病院。

「なんでいるの?」

「俺の友達、ちょうど居合わせたらしい。それで連絡きたんだ。お前、あの金髪1人でボコボコにしたのか?」

「え?ボコボコ?私がされたの間違いじゃなくて?」

魁斗が驚いた顔をするが、すぐに微笑んだ。

「生きててよかった。助けに行けなくてごめん。花宮唯さん。」

私は目を見開いた。
私は名乗ったことがない。
花宮なんて、言ってないのに。

「なんで…知ってるの?」

「幼馴染だよ。っていっても5歳も離れてるけど。それに、唯、モデルでしょ?」

私の中で走馬灯のようなものが見えた気がした。
魁斗、私はその名前を呼んだ時何か懐かしい感じがした。
手をつないだときのあの感じ。
私、知ってる。