3ヶ月前

「ねぇ、魁斗。魁斗は唯ちゃんのこと好きでしょ?」

お昼ご飯をみんなで食べているときに安曇さんが話し始めた。
下を向いて、なんだか辛そうだけど、声はいつも通りを保ってるみたいだった。

魁斗さんは何も言わない。
目を伏せて考えるようにしていると、急に安曇さんを見つめた。

「ごめん」

たったその一言だった。
その一言で、安曇さんは振られた。

「分かってたから、大丈夫だよ」

そう言って笑顔を作るも、目は涙をためていて。
目がかゆいといいながら目を擦るのはやっぱり何も隠せてなくて。
きっと恨まれるんだろうという恐怖で椅子から立ち上がると安曇さんが引き止める。

「まって」

流れる涙も拭わず、私を見つめてくる。
悲しみに満ちた、でも、決意に満ちた目をしていた。

「唯ちゃん。あたしは唯ちゃんに魁斗をとられちゃったけど、唯ちゃんにその気が無かったのは知ってるし、怒っても恨んでもないよ。ただ、魁斗の一番じゃなくなったのが悲しいだけ。唯ちゃんのことも、魁斗のことも怒ってないし大好きだよ。だから、2人とも、幸せになってね。唯ちゃん、魁斗のこと信じてあげて。魁斗をお願いします」

そういって鼻をすすりながら微笑んだ。
これが映画とかだったら綺麗事としか思わない。
でも、安曇さんだから、心の綺麗な人だから、心からの言葉なんだって分かった。

「分かりました」

「安曇、ごめん。唯ちゃんのこと、許してくれてありがとう」

安曇さんは何度も笑顔で頷いた。
それから、私と魁斗は付き合うことになった。
それから、安曇さんは家に来なくなった。
連絡も取らなくなった。


いや、取れなくなったんだ。