「あやめっち連れてきてくれたんだ!天才美人のテニスプレーヤー!」
…なんだって?
「ちょっとあやめ、あんたヒトをなんて紹介してんのよ」
「いーじゃないホントのことなんだから。全国二位の実力をここでアピールしなくてどうするの」
そう言うとあやめはユニフォームとラケットを手渡してきた。
「話すのがだめなら打ち合ってきなさい」
私は強引に更衣室に押し込まれた。
「…よかった」
更衣室までごみ溜めだったらどうしようかと思った。
とりあえず名前のないロッカーを借りることにした。
たてつけが悪いらしく、今にも扉が落ちそうだ。
「これホントに私のユニフォームだし…」
あやめが渡してきたのは自分が高校時代に着ていたユニフォーム。
白が基調のシンプルなもので気に入ってるけれど、背中にはでかでかと母校の名前。
懐かしいな…
全国大会初出場ながら偶然にも二位に食い込み、話題になったのが2年前。
そう言えば…
「あれから一回も打ってないや」
急に帰りたくなった。