家庭の事情で一年浪人していた私は、年下の同級生と一緒に、他県の大学へと進学した。
「葵〜」
新入生のオリエンテーションが終了し、帰ろうとしていた所を後ろから襲われた。
「やっぱり受かってたんだ!あんたまた美人になって〜」
同窓のあやめだ。
私と違って、こちらは順調に去年進学を決めていた。
早速躓いてなければ、2年生のはずだ。
「初めてにしては化粧うまいね?やっぱ美人だから見栄えが違うわ」
「…あんた、年くって喋りが年寄り臭くなったね」
憎まれ口を叩いてみたけれど、うまいと言われて悪いきはしない。
何を隠そう人生初化粧だ。
この顔を作るのにどれだけ四苦八苦したことか。
…「初めてのメイク」なんて本まで買ってしまったのは秘密だ。
「部活ばっかりしてて浮わついた噂もないから心配してたんだよ?
で?サークルもテニス?」
「まぁ一応…」
中学高校と続けてきたテニスは、自分の唯一の特技と言ってもいい。
運動部ならテニスにしようと入学前から決めていた。
「そう言うと思って、テニス部の主将には声かけてんの。会わせるね」
「今から!?」
有無を言わせないあやめはずんずん先を歩く。
他のサークルを見ることもなく、私のサークルはテニスになりそうだ…