今日一日のしめは、観覧車ということになった。
時間は夕方。
あやめが言うとおり、いい具合に綺麗な夕日がある。
今回のペアは、あやめだった。
驚いたことに今日一日、萩君とは一回もペアにならなかった。
3分の1の確立だというのに、よっぽど縁がないのだろう。
けれど慣れたあやめとの方が、変に気を使わなくて楽だった。
「綺麗~」
ゴンドラからの夕日を見て、あやめが歓声を上げる。
上を見れば、別のゴンドラに乗っている薫先輩も同じ体制で夕日を眺めていた。
ほんとに、子供のような人だ。
「葵ってさぁ。先輩に惚れたでしょ」
その様子を横目で見ていたらしいあやめが、窓の外を眺めながらぽつりと言った。
「へ?」
「自分で気づいてないとは言わせないからね。お化け屋敷からどーもあんた変だし」
あやめの口調は断定的だ。
質問ではなくて、確認。
「お化け屋敷で何言われたの?」
「…好きな人いるか?って」
「いないって言ったら?」
どうしてこの子は、どう答えたかまでわかっているのだろう。
6年間の友情とは恐ろしいものだ。
「萩君はどうかって。彼は私のことが好きみたいだからって」
「あのにぶちんっ」
あやめはため息を吐くと、上の先輩を睨むようにして見上げた。