救護テントにいかなきゃならないと先生がいって誠に残念ながら葉月と二人きりだ。

よしてほしい、そういうサービスは期待してない。

熱で朦朧とした頭のせいだと思う。

「何しに来たんだよ」

まだ隠していたい想いが、気を抜いたらこぼれそうになる。

必死に息を止める。

心とからだが裏腹に千千になるまえに。

「…楓?大丈夫か?」

「だめだよ。頭が痛いし、体は重い、それに暑くて息苦しい。」

「ねてなよ」

「寝てたいよ。君たちが邪魔しに来てるんだ…。一体何しに来たんだい。彼女の奮闘でも見ててやれよ」

こんなこと言いたいわけじゃない。

でも何か言ってないと、溢れてしまいそうだ。

何故か涙がでた。

葉月はぎょっとして、ティッシュを持ってきた。

それから心配そうな顔で私をのぞきこむ。

「ちゃんと優勝してくるからさ」

「君が優勝したら私のクラスは2位以下じゃないか…」

そんなのは別に心配しちゃいないんだ。

私が今考えているのは全部、葉月、君のことだ。

鈍くおろかに的を外して。

「葉月…」

葉月はもう保健室にはいない。

何も言わないで済んだと、安心して、心臓の痛みなど知らぬふりをした。