「ねぇ、夏波!!聞いてる??」
「え。え!?」
「もぉ、ちゃんと聞いとけよー」

弟がいるせいか少し口の悪い遥乃が口を尖らせる。
黙ってりゃお花のような子なのに……。

「だからね。河野って好きな人いんのかなぁ、って」

少し遠くにいる河野をこっそり見つめながら言った遥乃に私も首をかしげる。

「さぁ??でも、絶対に遥乃のこと好きだって!!授業中とかカナリ見てたし!!」
「……~~違う、って……」

頬を染めて俯く遥乃の瞳に流れていく景色が映る。

正直

こんなこと自分で言うのが

どれだけ辛いかって言われると


カナリ辛い。


でも、遥乃の為だし。
本当に河野は遥乃のこと好きなんじゃないかな、って思うときもあるし。

知ってるよ。
いつも見てたから―……。

なんだか苦しくなって、私は視線を遥乃から外して前に座る太ったおばさんとメモを片手に難しい顔をしている若い男の人を眺める。


『アイ、今日は始業式なんだ♪クラスがえキンチョーするッッ』
『おはよ。俺も今日、始業式。なんか、挨拶の言葉考えなきゃな...(-_-;)』
『あ。今日から先生生活かぁ...。がんばって!!』


ガタン ガタン......

朝のこの時間はあまり混んでいないから少し河野に感謝。
あ、遥乃にも。
ウトウトし始める私の膝でケータイが震える。
……アイかな??