「じゃあ、うちのクラスは喫茶店をすることに決定しました~!!」

学級委員が黒板に書いた『2-4*喫茶店』という文字をやる気満々に叩く。
クラスのムードは早くも文化祭一色。

「放課後残れる人は残ろうよ~」とか言っちゃってる人も数名いたり。
おいおい。
文化祭は1ヶ月先ですよ。


頬杖をつきながらなんとなく冷めた気持ちでクラスを見渡すKY野郎。
……私である。


だって、その日は好きな人になんか雰囲気に便乗して告白できる一大イベント。
なーのーに。
「私の好きな人は先生です☆付き合ってください!!」って……

「ムーリムリムリ……」
「なーにブツブツ言ってんの??」

前の席から振り返って私の机に私と同じように頬杖をつく千鶴。
席替えをして前後になったのだ。

「あ!!メール♪」
「……あんま目立ってケータイ使ってたら取り上げられるよ。校長変わって規則ちょっと緩くなったとはいえ」

校長が変わってからはケータイを校内で使っていてもあまり注意されなくなった。
嬉しいけどさ……。

「あ。ちょっと脇の近くにゴミついてるよ」
「え??」

腕を少し上げて見た私。

「……じゃあ、辻宮さんと山中さん立候補ですね」
「え、え……?……あ!?」

千鶴の罠に引っかかったと気がついたのはトーンの高い学級委員の声を聞いたときだった。

「千鶴……ッ」
「いいじゃ~ん。一回喫茶店の店員さんってやってみたかったんだ~♪文化祭の王道じゃん??」
「アンタだけその道ひとり孤独に歩いてよ」
「夏波道連れで~♪」
「~~~ッ」

恨めしげに睨んだ私をものともせずに千鶴は嬉しそうに歯を見せて笑う。



……余計、先生と一緒に…って誘うチャンスが消滅したじゃんッ!!



未練がましく先生を見たときに先生とちょうど目が合って私は思わず目を逸らした。

多分、私の一番好きな表情してるんだろうな。
あの、不思議そうな顔して首を傾げる……。

考えただけでときめいた私は誰にも気付かれないようにほんのりと赤くなって机に突っ伏したのであった―……。