修学旅行は嵐のような勢いで進み、とうとう呪いの―って感じてるのは私だけだけど―特別学習の日がやってきた。

「え~??夏波は午前スキュバ組~ィ!?」
「スキュバって…千鶴語使わないでよ」
「ってか、初日からずーっと夏波ったらテンション低いしー。アテンション低いよプリーズ」
「いや。全然おもしろくないよ」
「最終日くらい弾けよーよぉ」

口を尖らせる千鶴。
いつもだったら、『アテンション低くないよプリーズ』くらい返すのに。
ダメだなぁ、って。

「じゃあ私、午前ダイブ組だしッ!!バイビー♪」
「『バイビー♪』ってなんか、チョイス古ッ」

そんな私のツッコミをものともせずに、千鶴はスキップしながら行ってしまった。

シン…、といきなり静まり返った私達5人の部屋。
でも、部屋に残ってるのは唯だけ。

無駄に大きく響く時計の針で私は焦燥にかられる。
なんか、話さなきゃ。

「唯、え、と…行かないの??」
「……うん。藍架がこっち来るっていってたから」

それっきり、また重い沈黙で部屋の圧力が増す。

「「あのさ―……」」

口を開いたのは同時だった。

「あ。ごめん、唯が先に言って」
「……夏波は、遥乃になにも…してないよね??」
「え!?…う、ん」

私を見定めるように目を眇めながら唯が慎重に言葉を選ぶ。

「最近、遥乃たちと仲いい人が言ってるんだけど……。この前、遥乃に援交してるっていう噂が一瞬流れたでしょ??」
「あぁ……。うん」
「で。その人たちが、遥乃の噂流したの……夏波だ、って……」
「は!?」
「最初はみんな、信じてなかったんだけど、その人たちが夏波っていつも私らのこと見下してる感じじゃん??とか言い始めて……」

朝の、遥乃の言葉。
これで全部が繋がった。

「じゃあ、私が言った事…遥乃には言わないで。今、遥乃はマジでキレてるから」
「唯、ありがとう」
「うん。私は夏波と中学からずっと一緒なんだよ??初めて喋った人より、夏波のこと信じるに決まってんじゃん」

そう言って唯は少し笑うと、ドアノブに手をかけた。


じゃあ、遥乃。

一回、私達ちゃんと話した方がいいみたいだね。


私は心に誓って、唯の後を追うように部屋を出た―……。