「………おはよ」

面倒臭そうな顔で遥乃が私の顔も見ずに口早に言う。
「早く向こう行けば??」とも言いた気に。

「ねぇ、遥乃。私、なんか遥乃の嫌がることした??」

少し、語尾が弱くなったのは自信がなくなったから。
私、結構酷いこと平気でするし。

「なんかしたんなら、謝るし―……!?」

ガタンッ、と揺れて動き出した電車。
私は遥乃のすぐ横にある手すりに掴まりながら体制を整える。

「別に。ってか、私…夏波と喋りたくないんだ。向こう行って」

ガラガラ…ピシャンッ!!
シャッター完全に閉められたような…そんな音が聞こえた気がした。

「遥乃―……」

困ったように作り笑いを浮かべて、言葉を繋ごうとした私を遥乃が遮る。

「夏波って、いつでもそうやってヘラヘラ笑ってさ。…それがウザい。私らの事、ナメてない??」

グサッ、って…確かに聞こえた。

そこからどんどん血が溢れて、止まらない。

「……じゃあ、もう仲良くする気とか…全然ないって事??」

声が震えてる。
うぅん、声だけじゃない。
手も、足も。
体全体が。



いつか、誰かは言った。


『辛いときは神様が助けてくれる』


そんなの嘘じゃん??

ってか超、人任せ。

でもさ。


私は信じてたよ。



誰かが私を助けてくれるって



誰かが、私を見てくれるって―……。