「お母さん、なんかこれ…修学旅行のプリント」
「え?もうなの??」
「うん」

プリントを受け取ったお母さんは「夏波?」と私を呼んだ。

「ねぇ、この先生…なんて読むの?担任の先生よね?」
「うん??…あぁ。重束 閒だよ」
「アイ!?コレで?」
「うん。変わってるよね」
「へ~ぇ」

感心したようにプリントに視線を戻したお母さんをチラッと振り返ってから私は自分の部屋に戻った。



「そっか。アイは…私の担任、なんだよね」

なんか、変な感じ。

うーん。
アイにやっぱり言うべきだろうか??

いや。
そうしたら絶対に―……

「……やめたッ!!」

その続きは、考えたくない。
だって、アイを失うなんて考えられないし。
私は嫌な妄想を振り払うように頭を振って、ケータイの画面を見つめる。
ディスプレイには【遥乃】という文字。

謝らなきゃ、ダメだよね。
私が悪かったもん。アレは。

『今日は怒鳴ってごめんね。あの後すごく後悔した。遥乃が許してくれるかはわかんないけど、本当にごめん』

「これで、いいかなぁ……??」

遥乃は、大事な友達。
付き合いきれないと思われて仕方がないのは、私だ。

思い切って送信ボタンを押して、私はケータイを机の上に放り出した。
シャラッ、とぶら下がったストラップがこすれて透明な音をたてる。

もう少しだけ、河野のことは遥乃には秘密にしておこう。

たとえ

それが

裏切りになったとしても―……。



思ったより早く来た返信は予想外の内容だった。

『私もごめんね(>_<)!!夏波のこと疑うなんて私が悪いよ。夏波はずっと私の応援してくれてたのに…。だから、夏波は悪くないよ。疑ってごめんね』

「……バカ」

なんで遥乃が謝るの?
悪いのは私、って…なんか勘違いしてるよ。
私は遥乃に嘘ついてるんだよ??
裏切ってるんだよ??

でも、私は弱いからその優しさに甘えることしかしない。
うぅん。
甘えることしか出来ないんだ……。

『じゃあ、明日も一緒に学校行こう?? おやすみ』

遥乃の優しさに甘えて


私はまた



罪を重ねる―……。