「夏波、お風呂入らないの??」
「あー、入る」

ノックもせず入ってきたお母さんに眉をよせながらもぶっきらぼうに答える。
いい加減ノックすること覚えてくれよ……。

「そうそう。夏波、最近ケータイ使いすぎじゃない??確かに慶都高校に入ったらケータイ買ってあげるって言ったけど、使い放題していいわけじゃないんだから。あ!!あと、もうすぐ実力テストがあるらしいじゃない。ちゃんと勉強してるの??夏波は数学がダメなんだから早めに準備しておかなきゃいけないんだからね!!塾に高いお金払って言ってても自分で勉強しなきゃ意味が―……」
「あー、もう!!わかったって!!」

まだ何か言いた気なお母さんを部屋から追い出す。
数学とか数学とか数学とか…ほんっと、中学のときからセリフ変わってないしッ!!

「じゃあ、朝陽(アサヒ)も入るんだから早く出なさいよ」

朝陽とは私の妹だ。
部活命の中学2年生。

「はいはい」

ドアの向こうで尚も小言を続けようとするお母さんに呆れを通り越して感心してしまう。



私は


正しいこと、してる??

正しい答えを、持ってる??


それがわかんないから

不安で


つい、あんなことしてしまったんだ……。



嫌悪感に襲われた私は自分を追い立てるようにして浴室に向かった。