「笑ってごまかすのやめてよ」
「ごまかしてないって!!私が河野のこと好きなわけないよ」

まだ笑いながら言う私にとうとう遥乃がキレた。


「笑ってごまかさないでって言ってるじゃんッ!!」


大きな目に涙を溜めて、私を見る遥乃から目を逸らさないようにするのが精一杯で。

心の中で、叫んでる自分を押さえつけるのが精一杯で。


もう、何がなんだかわからなくて。


「遥乃……??」

上ずった私の声が放課後のシン、とした廊下にやけに響いた。

「私は別に夏波が河野のこと好きでも怒らないよ。…しょうがないもん。でも、それを笑ってごまかして……嘘つかれるのが嫌なのッ」

一息に言い切った遥乃は泣く直前みたいに肩を震わせる。

『嘘』??

私は


『嘘』を、ついてるの??

違うじゃん。

遥乃の為に我慢してるんじゃん。

頑張って、自分の気持ち押し殺して

泣きそうなの堪えて

でも

なんで?



なんで私がそんな風に言われなきゃいけないの―……!?



私の中で張り詰めていた『何か』が、プツンッ…と静かに音を立てて、切れた。