--------------------------------------------------------------------------------
「ねぇ、今……河野と、喋ってたよね?」
「う、ん」

なるべく平静を装う。
大丈夫。
ちゃんとやれば、ごまかせる。

「前から思ってたんだけど」


遥乃が怒ったような、悲しそうな顔をして私に言った。


「夏波って、河野のこと…好きなの―……??」


一瞬、その場の空気が一気に氷点下に下がったかと思った。

聞こえるのは、運動部の掛け声だけで。


大丈夫。

ごまかせる。


「……そ、んなわけないじゃ~ん!!」

笑う。

笑った方が、『本物』が見えなくなるから。
いや。
『偽物』さえも、『本物』に見えるようになるから。



でも


物事には限界があるもの。