高校から一緒になった遥乃と藍架とは違って、唯とは中学時代からの付き合いだ。
私が恋愛に奥手気味なのは仰月学園っていう女子中に通っていたせいかもしれない。

「だって、さっき思いっきり先生、夏波の方見てたよ??」
「……あぁ。そういえば、朝電車で見た気が……」
「なんだ。そういうこと」
「何??先生にホレた??」

私は前の子から回ってきたプリントを受け取って、笑いながら言った。

「私は小寺だけだから♪」
「うわ。言った!!」
「っていうか、話し変わるけど…遥乃も純情だよね~。今頃あんな片想いが見れるなんて……」
「ね~。遥乃、かわいいし告ったら一発だと思うんだけどなぁ」

そんなの起こってもらったら困るけど。

「私も思う。ってか、河野もモテるし美女美男カップル??」
「いいね。その響き!!いいなぁ、遥乃はかわいくて」
「夏波も言うほど可愛くなくないって!!」
「慰めありがとー」

私と河野が並んでも、平凡美男カップルじゃん……。
いや。
平凡より低いかも……いや。もっと―……

どんどん沈んでいく気持ちを吹き飛ばすみたいに唯がいきなり私の肩を叩いた。

「ねぇ、夏波。修学旅行の案内だよ、このプリント」
「え、え!?もう!?」
「なんかー…夏休み中に行く?…みたい」
「えー!?暑いじゃんー」
「でも、海だって♪振り替えもあるし」
「海??」
「2泊3日で8月の24日~26日だって」

プリントを読み上げる唯は少し楽しそうに笑っている。

「って、アレ??」

教室を見回した私はツンツンと唯の肩をつつく。

「ねぇ。もう皆…下校したっぽい??」
「え?…あ」

シン、とした教室に虚しく響いた声。
私たちは顔を見合わせて笑った。