「あんまり興味ないフリして、夏波も結構好みでしょ~!?」
「うー、ん。確かにカッコいいと思、う。うん」

いつもは冷静な唯も、イケメンには弱いのだ。

「ってか、小寺に悪いじゃんそんなこと言ってたら」
「私、ミーハー入ってますから」
「あ、そ」

ならいいけど。
独占欲の強い私は心底ホッとした。


じゃあ、河野は??


不意に聴こえた心の声。

今思えば、河野のこと珍しく見てなかったかも……。


遥乃は多分、ずっと見てたんだろうな……。

「夏波、唯~!!」
「遥乃!?」
「河野とッ、河野と目が合ったァァァ!!」
「よ、よかったねー!!」

慌てて出た言葉はあまりにも作り物っぽかった。
遥乃が気付かないといいけど。

「思わず逸らしちゃったよ……」

夢見心地な目をして語る遥乃は気付いてない。
よかった……。

「っていうか、いいなぁ~。4組の担任ッ!!1組、北原だよ!?ありえないッ!!」
「アイツ、生徒指導じゃなくなったんだ……」
「生徒指導は船木。しかも主任が奥だよ、奥ッ!!」
「ウソッ!!またアイツの現国~!?すっごい眠くなるんだけどッ」
「奥、絶対に3年まで私らのとこで現国やるよ~……」

グッタリと沈んだ遥乃は唐突に顔を上げた。

「でも、でも!!英語はあの、重束先生だって♪」
「英語なの??」
「担任なのに知らないの~!?」

驚いたように大きな目を更に広げて、遥乃が私を見る。
そんな遥乃に唯が私を指差して笑いを堪えながら言った。

「だって、聞いてよ遥乃。夏波、立ち寝してたしッ」
「えー!?あんなの漫画の中だけの話かと思ってた!!」

爆笑する私以外の3人に頬を膨らませながら私は首をめぐらせる。


河野、どこだろ……??


「夏波~??」

藍架が先に歩いていく2人と私を交互に見ながら声を掛ける。

「あ。ごめん、行こ!!」



思うわけないじゃん。



まさかこの出来事が





こんなにも私を変えるなんて―……。