「おい!!辻宮、出川!!早く教室入れ!!」
「「は~い!!」」

色黒でジャージ姿の体育教師の北原が私たちを名指しする。
口先だけイイコちゃんの返事をしながらも歩く私たち。
1年の時もあんなのだったし慣れてる。

「あー、あれで結婚してるとか世の中どう転ぶかわかんないよね」
「うん、うん。脅迫されて結婚させられたとか!!」
「ヒド!!」

唯とクスクス笑いながら教室のドアを開けた。

「あ!!夏波、唯!!」
「「おはよ~♪」」

ハモッた私たちに笑いながら近づいてくる女子は、時々一緒に喋る山中 千鶴。
派手な感じの可愛い子。
小柄な体をアクセサリーで飾ってる姿はまさに現代の女子高生。
今日も腕にゴロゴロとでっかいブレスをつけている。

「見て~♪雑誌に載ってたから買ったんだ~」
「超かわいいッ!!いいなぁ」

自慢げに耳にかかった髪をどけて、私たちに待ってました!!とばかりにキラキラ光るハートのモチーフのピアスを見せた千鶴。

「この雑誌なんだけど~……」

ガラッとドアが開いて、背の高い男の人が入ってきた。
……担任、登場。
ドアの近くで喋っていた私たちは思わず開いたドアの方を凝視する。
特に近かった私は思いっきり。

「え―……??」
「ん??」

ポカン、と口を開ける私を見て、彼は不思議そうな顔をして首を傾げた。

だって。


こんな展開、あり??



彼は―……



「ア―……」

言いかけた言葉をムリヤリ呑み込んで、会釈程度に小さく彼に笑った。

いや、いや。
まさか。

「はい。席についてー」

ガタガタと音を立てて席に着く生徒を眺めてから彼は口を開く。