わたしは手を振り返しながら二人の元へ寄っていく。

絢斗くんも隣を歩いて近づいていった。

グレーのコートを着ている今日の沙耶は、なんだか普段よりも落ち着いた感じに見えた。

紺色のジャケットを着ている敦瑠くんも、大人っぽく見える。

ちょっとダブルデートみたい、なんて思ったけれど、そんなことを言ったら沙耶が怒りそうだからやめた。

「とりあえず飯? 腹へったよなあ」

お腹を押さえながらそう言った敦瑠くんに、わたしたちはうなずく。

そして沙耶が陽気な声をだした。

「あのね、駅前に美味しいパスタ屋さんあるんだよー!」

「本当? 行ってみたい!」

瞳を輝かせたわたしに絢斗くんと敦瑠くんも賛同して、沙耶イチオシのお店でご飯を食べることになった。

沙耶と敦瑠くんが賑やかにしゃべって歩く後ろを、絢斗くんとわたしがついていく。

仲の良い二人の後ろ姿を見ていた視線を、そっとうつむくようにして絢斗くんの手にうつした。

電車ではわたしの手を握ってくれていたけど、今は離れている。

沙耶たちがいるからだよね。
いつもならこういうとき絢斗くんはわたしの手を握っている。