「このような時間をお取りいただき、
ありがとうございます
私は紅麻国のプリンセス兼水無月君の
許嫁みたいなものです」

「ほぉ
プリンセスがこんなところに来るとはなぁ
それより許嫁になったのか?
うちの息子なんかと!?」

「はい
私の父上がとても水無月君のことを
気に入ってしまって、勝手に…
私の父上は1度言ったら聞かない人なので…
本当にすいません!」

そんな勝手な口約束なんて駄目だ、と
怒られると思っていた睦月は、とても心配だった

しかし水無月君の父親はこんな息子で
良いのか、と聞いてきたのだった

「優翔はもったいない
もっといい相手がいるだろう!?」

なかばあきれながら当主は言った
冗談だと言って欲しいらしい

「水無月君じゃなきゃ駄目なんです
私の傷を回復してくれるのも
彼だけなんです

もし戦いのとき水無月君がいなかったら
助けてくれなかったら今私は死んでいた
と思います
彼は私の命の恩人でもあるんです!」

「なんとなくは息子から聞いていたけどなぁ
そこまで息子のことを思っているなら
私は許そう
優翔よ
家のことは気にするな
次期当主はお前の親戚から選ぶ
サクリトスを卒業したら行ってこい
ただし弱音を吐いて家に戻ることは
断じて許さんぞ!」

先程まで部屋を覆っていた緊張した空気は、
一瞬にしてなくなった
また睦月の顔にも笑顔が溢れた
優翔も顔には出さないものの心のなかで
すごく喜んでいた

睦月に読心術で読まれているとも知らずに…