「うん。
なんで?」


「…
だから…
デイジーが本当に必要なのは、アオじゃなくて私で…」


モジモジは加速する。
踏んだらぐうかわな地雷とはナニゴトか。

アイスブルーの凝視に耐えられなくなったのか、シズクはアオに背を向けて身を屈め、バックパックのジッパーを指でつまむ。


「ちょ、シズ」


「私が、アオが好きだから」


「ハイ?」


今までの、歯切れの悪い言葉はドコへやら。
食いぎみに返ってきたあまりに明白な答えに、アオの思考は異世界へトリップした。

エコーがかかったように、ジッパーの閉まる音が響く。


「それが完全にバレたら、デイジーは私を動かすためにアオを使ってくるかも知れない」


エコーがかかったように、シズクの声が響く。


「誰かに弱みを握られるなんて、真っ平。
だからアオには逃げてもらおうと…」


エコーがかかったように、シズクがバックパックを背負うゴソゴソという音も…


「っっっ!!!???」


声にならない声を上げたアオは、勢いよくピョコンと立ち上がった。

膝にあったカラビナが落ちてエコーがかかった金属音が脳内に響くが、もうどーでもイイ。

なんかもう、なにもかもどーでもイイ。