「なぁ『Sy-u800』、覚えてるか?
俺の初仕事の時のコト」
透き通るような笑みを浮かべたまま、ビジネスマンは言った。
素早く周囲に視線を走らせたアオが『やめろ』と唇を動かすが、ビジネスマンは気にしない。
それどころか、他人のフリすらやめてアオの肩に手を乗せる。
「初めて拳銃なんか持って。
初めて人を撃って。
俺、怖くて怖くて、動けなくなってさ。
このまま見つかって殺されンだろうなって覚悟してたのに、なんでかおまえが迎えに来てくれたンだよなぁ」
「やめろ」
「おまえ、アレだろ。
たまたまこの辺りで別の仕事してて通りかかっただけ、とか言ってたケド、嘘だろ。
俺が、そもそも出てく時からビビってたの知ってて、助けにきたンだろ?」
「やめろって」
「てかおまえさ、俺以外の仲間も、色々助けてきたンじゃねェの?
おまえが裏切ったってアイツらが公言してから、仲間が軒並み俺に連絡してきたよ。
『おまえはこれからどーなるンだ』ってさ。
互いに関心を持つな、仕事以外で交流するな、って、嫌ってほど叩き込まれてる仲間たちが、だ」
「いい加減にしろ。
ドコでダレに監視されてるか」
「手遅れだって言ったろ?
ココの防犯カメラの映像は、リアルタイムでアイツらに流れてる」
「っ!?」
アオは肩に置かれた手を強く払い退け、穏やかに微笑むビジネスマンを睨みつけた。