「どうして今回の件に限って、余計なコトを知りたがるンだ?」
「…」
「俺たちがクライアントなんて知って、依頼の理由を知って、いったいなんになる?
俺たちはただ機械的に、下された命令に従うだけだ。
‥‥‥なぁ…」
「…」
「本当にヤったンだよな?」
「あぁ」
パチンコ台のハンドルを手の節が白くなるほど握りしめ、唇を微かに震わせるビジネスマンとは対照的に、アオはレイバンの奥のアイスブルーを冷たく輝かせて素っ気なく答えた。
けれどビジネスマンは、念を押すように食い下がる。
「おまえが俺に託した成果…
アレ、髪だろ?」
「見たのか?」
「見なくてもわかる。
肉片の重さじゃなかったからな。
それでも、ヤったンだよな?」
「あぁ」
「クライアントを知りたがるのもココに居続けるのも、ただの気紛れで…
ヤるコトはヤったンだよ、な?」
「くどい」
冷淡に会話を打ち切って。
アイスコーヒーを飲み干して。
アオは空になったプラカップを握り潰して立ち上がった。