「斎藤さん。ちょっといい?」

顔を見たが私には見覚えがなく、
それよりお昼を温かいうちに食べたいという
欲求の方が勝っていた。

「急用ですか?
 そうでなければお昼を食べてからで・・・」

私がまだ喋り終わらないうちに、
女の人に腕を引っ張られ連れて行かれてしまった。

「あの!私お昼が!」

私の声は女の人には届いていないようで
まっすぐ前を向き歩き続けている。
そんなに急用なんだろうか。

仕方なく彼女に歩く速さを合わせ、
連れてこられたのは給湯室だった。

給湯室に入ったら背中をドンッと押され、
ビックリして私はしりもちを着いてしまった。

「いたたたた・・・・・・。」

私の声などやっぱり届かないようで、
先程の女の人は別の女性と話をしていた。

「ちゃんと使用中にした?」
「大丈夫!中から鍵もかけちゃえばいいでしょ。」

鍵?!私、今からどうなんの!?
ハラハラしながらお尻を持ち上げた。

状況を把握する為周りを見渡した。
さっき私を連れてきた女の人と、
もう一人すごい目で睨みつけている女の人と、
その後ろに小さくて可愛い女の子が1人。

後ろに隠れている子は今にも、
泣きだしそうな顔をして私を見つめている。