背後から誰かに名前を呼ばれ、弾かれるように振り向いた。
「ゆっ、百合ちゃん!?」
「やっほー!」
そこに居たのは朝から学校で話題になっている百合ちゃんだ。
上機嫌に「昨日ぶりだね〜!」と笑顔でわたしに手を振っている。
な、なんで百合ちゃんがこんなところに………。
もしかして橘くんとお昼一緒に過ごす約束でもしてたのかな?
せっかく今日こそはすぐに気づいてもらおうと思ったのに、橘くんの名前を叫ぶ前に百合ちゃんに掻き消されてしまった。
ううっ………ちょっとタイミング悪かったな。
当然、橘くんはわたしに気づいていない。
「こんなところでどうしたの?」
「ん〜、ちょっとね」
「ちょっと?」
曖昧な答えに思わず首を傾げた。
なんだか、昨日会ったときと比べると百合ちゃんを纏う雰囲気が違うような気がする。
背筋がピリつくような寒気を感じた。