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「ふんふんふーん」
鼻歌交じりに軽くステップを踏みながら、廊下を1人で歩いていた。
長かった午前の授業もようやく終わり、待ちに待った昼休み。
図書室近くの外でお昼を食べている橘くんに会いに行く途中だ。
購買でブラックコーヒーもばっちり買ったし、今度こそ喜んでくれるといいなぁ。
「ありがとう日菜子」なんて笑顔で言われちゃったりして!
妄想が新たな妄想に繋がり、緩む顔が抑えられない。
橘くんに会う前までにこのアホ丸出しの変な顔を戻さないと。
ぎゅっと頬をつねって痛みと引き換えになんとか緩んだ顔を抑えることに成功したけど、結局橘くんの側に行けばすぐヘラヘラ笑ってしまうから意味がない気がしてきた。
好きすぎるっていうのも大変かもね。
これから橘くんに会えるんだと思うと、頭の中も橘くんでいっぱいだ。
ようやく見えてきた図書室の外で昨日と同じように壁に寄り掛かり、パンをかじる橘くんの姿が見えた。
うっ……また本読んでる。
本を読んでいる橘くんも当然好きだけど、なかなか気づいてもらえないのが辛い。
ここで引いちゃダメだよね!
今日は1発で気づいてもらおう。
「橘くーーーー」
「あっれー、日菜子ちゃんじゃない?」