「ふぎゃああん!」


突然、赤ん坊が泣きだした。
落ち込んでいた私は苛立ち、それを無視して風呂場へ向かう。

「あんたはいいよね! これからだから。だけど……私は……私はもう」


(私はもう駄目なんだ! 唯一恋した人とも結ばれず、その人との子どもも持てず……何も残さずに消えるだけ)


赤ん坊に八つ当たりはみっともないから、急いで風呂に浸かり顔を洗う。後から後から湧く涙は止まらずに、浴室の中に赤ん坊の泣き声が同調するように響いた。


いつもなら少しで泣き止むのに。あまりに泣き止まなくてどこかが悪いのだろうかと心配になり、急いで上がると籠に入った赤ん坊を覗き込んだ。


「どうしたの? どこか痛いの?」

「あ~あ~……うぅ」


赤ん坊は必死に手を伸ばしてくる。とりあえず手を差し出せば、ギュッと握りしめられてハッとなった。