「ふぎゃああん!」

「あ、待ってなさい! 今レジだけ済ませるから」


駄菓子屋のレジを置くたたみ一畳ほどのスペース。今はそこに藤の籠を置き、座布団を何枚も敷いて赤子を寝かせていた。


あの大雪の日……


雪の中に埋もれていた赤ん坊は、まだ生後間もない女の子だった。

近所の人がたまたま車で通りかかったため、事情を聞いてすぐに病院に連れて行けたのは幸いだった。低体温になってはいたものの、赤ん坊は無事に回復して退院出来たのだ。


けれども、困ったことに近隣の保護施設は定員オーバーで余裕がない。駄菓子屋をしている私は幸い家で面倒を見ることができるから、何ヶ月かだけ預かることに決めた。里親を捜してもらうことを条件に。


体験してみて初めてわかったけど、赤ん坊はこんなにも泣くものかと驚いた。

夜中だろうと昼間だろうと、3時間ごとに空腹で泣く。オムツが濡れても泣く。


40を過ぎていきなり降ってきた子育てという責任と、なぜ自分が他人の子どもを育てなきゃいけないという理不尽さに、寝不足も相まって苛立つことも少なくない。


だけど、赤ん坊には何の罪もないと自分に言い聞かせて堪えていた。