それから私は何十年とひとりで駄菓子屋を続けていた。

体調が悪いときやどうしてもという時以外は開けて、子ども達の笑顔を見守り続けて。

子ども好きな両親が、戦後の物がない時代から始めたお店。子どものほんものの笑顔は、どんな時代でも変わらない。


独り身でずっとお店を続けるうちに“お姉ちゃん”から、“おばちゃん”と呼ばれる年代になって。ああ、このままずっとひとりで年を取り、このまま独りぼっちで命を終えるのだなぁ……と。急に虚しく侘しい気持ちになった。


朝から大雪が降ってきたせいか、冷えから体のあちこちが痛んで。自分の張りのない手を見て。年月の残酷さを悟った帰り道――

唯一の居場所である駄菓子屋の前に、大きな籠が置いてあるのを見つけた。


――籠の中に入っていたのは、犬猫でなく。人間の赤ん坊だった。