そして伊織さんが私の指に填めてくれたのが、シンプルな指輪。普段使いもできそうな、プラチナ台に小さなダイヤが散りばめられたデザインだった。


「……日常的につけるといい……虫除けにもなる」


マリッジリングは以前いただいたけど、もったいなくて着けないでいたら伊織さんは気にしてたらしい。虫除け、という言葉に彼のやきもちを感じて微笑んだ。


「嬉しいです。伊織さん……ありがとう」

「い、いや……」


照れてるらしい伊織さんは、そっぽを向きながらもチラッとこちらを見てくる。そんな様子がかわいくて、クスクスと笑いながら。私は紙袋から手編みのマフラーを取り出して彼の首に巻いた。


「あまり大したものでなくてごめんなさい。でも……自分でできるプレゼントではこれくらいしかありませんけど」


けど、と私は伊織さんの手を自分の両手で包み込む。そして、そのまま自分のお腹に導いた。


怪訝そうな眼差しの伊織さんに、私は微笑みかけた。


「私からの、もうひとつのプレゼントです……来年は家族4人でクリスマスを迎えることができそうですよ」


そう告げた時の伊織さんの顔は、とても他に話せるものではありませんでしたけど。


家族3人で迎えた初めてのクリスマス。


来年はきっと、新しい家族が仲間入りして。もっともっとしあわせが増えてくれるでしょう。


こうして、ずっと。年を経ても私たち家族はしあわせなクリスマスが続いてゆく。


いつまでも、いつまでも。


(終わり)