そして、食後のデザートでフルーツタルトを切り分ける。
「これはオレンジの代わりにうんしゅうミカンを使ってます。そんなに酸っぱくないので、食べてみてください」
「あ、ああ」
オレンジの甘酸っぱさが不得手な伊織さんのために、甘く完熟したミカンをたっぷり。子どもの前で好き嫌いはダメですよ、と無言の圧力を掛ければ。躊躇いながらもフォークを手にする。
離乳食を食べ終えたみどりがじ~っと父親の一挙一動を眺めてます。娘は頭が良いのか、人を観察する癖があるんですよ。
娘と妻の視線に後押しされて、伊織さんはタルトにフォークを入れる。小さな切れ端をパクリと食べて……ひと言。
「……うまい」
「やった!みどり、成功だよ~」
「うきゅ~」
私が思わず両手を叩くと、みどりも楽しいのか両手をポンポン合わせて笑い声を上げる。
その後離乳食バージョンのクリスマスケーキをみどりに食べさせ、紅茶を淹れてリビングでのんびりとくつろいでいる最中。伊織さんが大きな包みを抱えて入ってきた。