源さんが暖まってしばらく経った頃、スマホにメールが届いた。


【もうすぐ着くから支度しておいてくれ】


思わず「はいはい」なんてスマホに向かって返事をしてしまって。源さんの不思議そうな視線を受けて、恥ずかしさから頬が熱くなる。


「あ、おばあちゃんをよろしくお願いしますね。主人が帰ってきますので、家に戻ります」

「ほぅか。じゃあ、旦那さんによろしくなぁ」


源さんも伊織さんとは顔見知りだから、ニコニコと笑顔で「食べられたら一緒に食べとくれ」と、おはぎを2つ分けて下さった。


「ありがとうございます。伊織さんも喜びます」


源さんも伊織さんの食事事情は知っていて、敢えてこうしてきちんと分け前を下さる。源さんなりの励ましだ……と考えてた。


おはぎはまだ一度に完食は難しいけど、少しずつ分けて食べれば問題ない。甘いものが好きな伊織さんだから、喜んでくれるだろうな。


一度外に出るためみどりに着込ませていると、源さんも心配そうにあれこれ着せようとしてちょっと可笑しくなる。おばあちゃんは口こそ出さないけど、表情で丸わかりで。何だかんだ言ってもやっぱりみどりが可愛いんだなって、微笑ましく思えた。


源さんとおばあちゃんはこれから古い映画を観るらしい。源さんがビデオテープカセットの映画を持って来たから、唯一の映像再生機であるビデオデッキに入れてた。


どうやら、まったりと映画鑑賞して過ごすらしい。なかなかおしゃれだな、と2人を見ながら笑顔でおはる屋を出た。