いつまでも痕跡を眺めても仕方ない……と私は想いを振り切り、その場所を後にして一度自室へ戻った。





正式な夫婦になってから同じ寝室を使うようになった私たち。さすがに深夜0時近いと眠くなるから、就寝の支度をしてから寝室のソファに座ってた。


まだ伊織さんはいないから……とスマホを眺めてると、「なんだ、まだ寝てなかったのか?」とお風呂から上がったらしい伊織さんは、バスタオルで髪を乾かしながら寝室へ入ってきた。


「あ、はい。まだ……」


慌ててスマホを隠そうとすると、時すでに遅くて。伊織さんにばっちりと見られてしまいました。


「その写真、美鈴か……珍しく笑顔だな」

「はい……ファミレスではちょっと笑ってくれましたから」

「そうか……」


伊織さんはそれから黙ってジッと美鈴ちゃんの写真を眺めてる。今さら引っ込めるわけにもいかなくて、私も一緒に写真を見てたら。伊織さんはぽつりとこぼした。


「……子どももいいものだな。この手に抱いてみて、初めてわかった。この子が碧とおれの子どもだったらと……心底望んでた」

「……伊織さん」

「たった1日でも……つらいものだな、居なくなるのは」

「……そうですね」


伊織さんは後ろから私を抱きしめると、頭に軽くキスをしてささやく。


「碧、おれたちも……」


伊織さんが甘く熱い囁きをくれた瞬間――


なぜか、胃の中がひっくり返ったように急に気持ちが悪くなった。