「…………」

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沈黙が下りてます現在、ただ今夜の9時過ぎです。


伊織さんが帰宅していつも通りにダイニングルームに入ってきた途端、篭に入ってたものを見つけて……スーツを脱ぎながら固まった。


ちょうど眠りから目が覚めた赤ちゃんは、じいっと伊織さんを見てるから。互いに無言で見つめあってるんだけど。ひとまずはフリーズした伊織さんを何とかしないと。


(もしかすると伊織さんが父親なのかも……しれないし)


その可能性を考えただけで、ズキッと胸が痛む。夢中でお世話をしている時は考えまいとしていたけど、今こうして親子かもしれない2人が対面したという事実は。隠してきた悲しみや焦りが滲みそうになる。


もしもこの子が本当に伊織さんの子どもなら、彼がそうだと知った時。きっと責任を取ろうとする。だって、伊織さんは一見冷たく見えて情が深い。見捨てるなんて、絶対にないだろう。


きっと、伊織さんも知らない子どもだったに違いない。存在すら知らないなら、責任の取りようもなかったけど。こうして知ったなら……。


(きっと、父親として責任を取るよね)


それはつまり……その母親と結婚する……伊織さんならそれくらいしかねない。


(そうなったら。私は……同意……しなきゃ……いけないよね?)


まだ、私と伊織さんに子どもはいない。結婚して1年と数ヶ月経つけど、本当の意味で夫婦になれて1ヶ月かそこらしか経っていないから。赤ちゃんなんて無理だ。


なら……やっぱり私は。