お腹が空いていたからなのか、勢いよくミルクが減っていく。空気を一緒に飲ませないように、と哺乳瓶の角度を変えながら、飲んだ量を観察。
(空気を飲み込むとミルクを吐いちゃうから……飲んだ後はゲップをさせないと)
さっき読んだ育児書の内容を思い出しながら、にわか知識で赤ちゃんの様子を見守る。抱き方1つでもちゃんとした理由があって、世の中のお母さんって大変なんだなって実感した。
たぶん飲み終えただろう頃を見計らって、縦抱きにしてから赤ちゃんの頭を私の肩に載せて背中を軽く叩く。しばらくして、けふ、とかわいらしい音がしてホッとした。
お腹がいっぱいになったからか、赤ちゃんが眠たげにあくびをしてる。
「それじゃあお寝んねしようね」
話しかけながら篭に敷いたベビー用布団にそっと横たえ、寒くならないように肌掛けを体にかけてエアコンで室温と湿度を調整。高機能なエアコンでよかった。センサーがついて冷風が赤ちゃんにいかないから。
すうすうと寝入った赤ちゃんを見ながら、どっと疲れを感じたけど。なんだか全身がぽかぽかとなるような暖かさを感じる。
(もしかすると、これが母性愛ってものかな?)
赤ちゃんを見てるだけで頬が緩むし、幸せな気分になる。可愛くてなにかしたくなる。
自分でも、こんな気持ちになるなんて思わなかった。
(だけど……どうしてお母さんは手放したんだろう? こんなに健康そうで、布団も籠もちゃんとしたものだし。やっぱり経済的に苦しくなって……なのかな?)
赤ちゃんが愛されて育ったことは一目で解った。だから、よほど切迫した事情があるのだと思う。きっと断腸の思いで託すために連れてきたんだろう。
(お母さんがちゃんと思い直してくれますように……)