これで大丈夫。落ち着くかなと思ったのに。


「ふんぎゃ~!」


赤ちゃんはもっと顔を歪ませて、火がついたように泣き出した。


「ええっと……待って。ほら、猫ちゃんいますよ~」


何とかあやそうと無駄な努力をしてみたけれど、ますます勢いをつけてギャン泣きされてしまいました。


(泣かないで、って言っても無理だよね。ええと……確かおばあちゃんはミルクかオムツって言ってたっけ)


こうなったらおばあちゃんのアドバイスに従って、何とかお世話してみるしかない。赤ちゃんをそっとかごに寝かせて、肌掛けをかけてからテーブルで開いた風呂敷の中身をチェックする。


まだ新しい哺乳瓶と缶入りの粉ミルクを見つけた。きっとおばあちゃんが近くの薬局まで買いに行ってくれたんだろう。


(おばあちゃん、ありがとう)


おばあちゃんは口は悪いしすぐに突き放されるけど、自分で努力してどうにもならなければちゃんと手助けしてくれる。


わかりにくいし遠回しな優しさだけど、それは真の愛情からくるものだと私は思う。 本人のためを思えば、努力や経験してこそ得るものや成長する芽を摘むなんてことはできないはずだし。


私だって、いずれ母親になるならこれくらいで狼狽えてちゃダメ。おばあちゃんくらいどっしりした人には難しいけど。子どもから頼られる母親になりたい。だから、これはいいチャンスだ。


たとえこの子が伊織さんの子どもでも、そうでなくても……おばあちゃんの言う通り。子どもに罪はない。


私だって、母親に捨てられた。複雑な気持ちは薄まらないけど。それでもこの子は昔の私と同じ。なら、一生懸命お世話しよう。そう決意した。