風呂敷包みを開いてみたら、そこにあったのは布のオムツと古びた育児本……そして、母子手帳があった。
「これ……私のだ」
“篠崎 碧”
へその緒がついたまま捨てられた私は、おばあちゃんが見つけてくれなければきっと死んでた。おばあちゃんがお母さん代わりに一生懸命育ててくれたから、私はこうして大人になって。伊織さんとも出逢えたんだ。
そして複雑な事情で彼と契約結婚したけど、奇跡的に想いを重ねることができて。今では本物の夫婦になれた。
それはとても幸せなことだし、身に過ぎた幸運と感じてる。
伊織さんの過去を全ては知らないし、無理に問い質すつもりはない。彼が話したい時に話してくれればって考えてる。
でも、やっぱり気にならないと言えば嘘になる。
(美里さん……って誰だろう?伊織さんが父親というなら……やっぱりそういった関係があったんだよね?)
伊織さんが女性経験がまったく無いとは思えない……その……手慣れているし、私はいつも夢の中にいるようで。いつの間にか気付いたら朝に……なんてパターンばかりだし。
最近はやたらスキンシップも増えて……って思い出しただけで、頭が沸騰しそうなくらい熱くなる。
(伊織さんが慣れてるってことは……他の女の人と……ってことだよね。それは仕方ない……私と出逢う前だし……)
複雑な気持ちはあるけれど、結婚前だったら伊織さんの自由だし。そう考えても、やっぱり胸が重くなるのは避けられない。
伊織さんの……子ども……赤ちゃん……。 私とは違う女性との。
何とも言えない気持ちのまま、かごに入った赤ちゃんの様子を見ようと覗いてみた。