1年以上……え?


確かに入籍してちょうど1年経つけど、まさか……伊織さんは憶えてたの?


市役所に行った時、あんなに何もかもに無関心そうだったのに。それが悲しくて、せめて自分だけでも……と記憶にしっかり書き留めた日付。


もしも、いえ。まさか。


半信半疑で彼をジッと見ていると、伊織さんはフッと笑顔になる。


それはとても柔らかく優しくあたたかい眼差しで。私を包み込むような愛情を、確かに感じられた。


「……今日が、おれたちが始まった日だろう?」


伊織さんの指は私の左手の薬指に触れる。以前贈られたのはエンゲージリングだから、普段使いには厳しい。だから、今も棚に大切にしまってあるけれど。


気がつけば、私の薬指にはシンプルな指輪がはまっていた。


それは、伊織さんの左手薬指にも輝く同じデザインのマリッジリング。


「おまえが永遠におれのものという証だ。絶対に外すなよ」


持ち上げられた指にそのままキスをされて、ギギッと固まってしまいました。すみません……未だに免疫がなくて。


普段、伊織さんはあまりコミュニケーションが多い方ではないので、どうしても慣れなくて恥ずかしいんです!


「とりあえず、おれの本気に合わせるためにゆっくり始めるとするか?」

「……え?」


視界が動いたと思えば、いつの間にか私は伊織さんに抱き上げられてました。あれ?


「言っただろ。子作りに協力するのはやぶさかではないと。おまえのペースに合わせてやるから安心しろ」


にっこりと笑った……伊織さんは笑みがちょっと悪魔に見えたのは、私の気のせいでしょうか?


そして、私が伊織さんにしがみついて向かった先は……。





4月の初めての結婚記念日。


私と伊織さんは、ちょっとだけ仲良くなりました。