あ、また。3度目のため息を吐かれちゃいましたけど。
「おまえな……花子と同じようになりたいのか? 無意識に誘っているとしか思えないのだが」
「え、花子……?」
伊織さんのふか~いため息とともに吐かれた言葉は、私の予想を越えるもので。誘うだとかなんだとか。意味がわかりません。
きっときょとんとしていただろう私の間の抜けた顔に、伊織さんからのデコピンがお見舞いされました。
「いたっ!」
「あのな、おれは体調不良でも何でもない。早とちりして先走るな。あと、男をベッドに誘うなら、抱かれたいと言ってるも同然なんだといい加減自覚を持て」
「…………」
伊織さんの話に、ガチンと全身が固まったのは言うまでもなく。
停止した頭を必死に動かして彼の言葉を噛み砕けば、自分がしてきたのはとんでもないことだと、うっすらと理解する。
「そ、そんな……ささ、誘うなんて」
ぼん! と爆発するように顔と全身が熱くなったのは、きっと気のせいじゃない。それを見て、伊織さんはクスリと笑った。
「おまえが計算してそんなことをできるやつじゃないのは知ってるさ。だが、本気で子どもが欲しいなら。協力するのもやぶさかではないが?」