「伊織さん、死ぬほどつらいんですか? もしかして胃潰瘍が悪化して……大変! きゅ、救急車を」
一瞬頭が真っ白になって動揺したけど、なら尚更横にさせなきゃ! と思い直して使命感に燃えた。今、伊織さんを助けられるのは私だけと。
「痛みが激しいなら、早くベッドで横になってください。薬を持ってきますから……あ、救急車も呼んでおきますね」
一生懸命に考えてから言葉にしたのに、伊織さんから再度大きなため息が聞こえた。
「……ともに寝室に行くなら、おれはもう遠慮はしないぞ? 同意したものとみなすからな」
「え、はい……?」
同意したものって。救急車を呼ぶことかな? そんなのはもちろんいいに決まってる。
「はい。私も(あなたの体調不良を)きちんと理解して覚悟をしてます(入院の)準備も万端にしますし。遠慮なんてしないでください、私たちは夫婦なんですから」
伊織さんが不安がらないように、となるべく明るい笑顔で彼の身体を支えた。
「(入院も)今回で2度目の経験ですから、私も多少は以前より落ち着いていられると思います」
私が安心させるためにとかけた言葉を聞いた伊織さんは、なぜかピタリと動きを止めた。