6月のよく晴れ渡った空に、鐘の音が鳴り響く。
ガラスを通した窓の外を見れば、懐かしい人たちが集まってくれていて。思わず頬が綻んだ。
コンコン、とドアノックの音がして、介添えの女性がどうぞと促せば。ひょこっと顔を出したのはベールガール役を務める顔馴染みの女の子。
「うわぁ、心愛お姉ちゃん、キレイ! すっごく綺麗!! いいな~こりゃ堅お兄ちゃんもしあわせだな」
興奮して頬を染める彼女だって、顔立ちはお父さんによく似てとても整った美人さん。
「そんなことないよ。みどりちゃんの方が綺麗な花嫁さんになれるって」
「う~ん、そうかなあ。あたしあんまり自信ないんだよね、全然告られたこともないし」
自信なさげに眉を下げるみどりちゃん。娘を溺愛するお父さんが強力なガードをしてるせいだ……って。全然気づいてないんだろうな。
クスリ、と微笑んだわたしは。ブーケの中から一輪の花を抜いてみどりちゃんのアップにした髪に挿した。
「大丈夫、みどりちゃんはかわいいから自信を持って。きっと大切な人は近くにいるから」
「そ、そうかな?」
「うん、きっと。周りをよく見れば騎士(ナイト)はいるよ」
みどりちゃんも、お母さんに似て自分へ向けられる好意には鈍い。
だけど、きっといつか。
自分のそばにしあわせがあると気づける。
あの、みどりちゃんのご両親のように。
窓の外……何年か前に夫婦となった静子おばあちゃんと源三郎さんが、孫たちに囲まれしあわせそうに笑ってる。
わたしたちもそうなりたい……碧お姉ちゃんと伊織さんのように恋人みたいな夫婦に、そして年を取れば静子おばあちゃんや源三郎さんのように穏やかに微笑みあいたい。
それは、これからの自分たち次第。しあわせになるために……
わたしは、はじめの一歩を踏み出す。
最愛のひとと、ともに歩んでゆくために――。
(終わり)