「なぁに?大和先輩とケンカでもした?」
くるみの問いに、私は首を横に振った。

「じゃあ、映画が面白くなかった?」
美里の問いにも、首を横に振る。

その日は大和さんと、彼が見たいと言う映画を見に行った。
私も"見たい"と思っていた、原作がヒットのミステリーで、原作を読んだ私も、本とは違う結末が楽しめた。

「じゃあどうして、 そんなに暗い顔してるの?」
里菜ちゃんが、心配そうに私の顔を覗き込む。
しおりちゃんと真希ちゃんも、里菜ちゃんと同じような顔をしている。

私、そんなにいつもと違うのかな?

「ねぇ智美。言いたくないなら仕方ないけど、口に出すことで楽になることもあるよ」
くるみが優しく言ってくれる。

その優しさに導かれるように、私はゆっくり口を開いた。

「うん、あのね…。
私の気のせいだと思うんだけど。
…なんか、大和さんとの距離が、前よりも開いたみたいに感じて…。
…たぶん、久しぶりに会ったせいで、そう感じたんだと思う…」
「……………」
「……………」

「うん、ごめんね。
きっと、私の気のせいだから、気にしないでね…」
みんなの沈黙が怖くて、私は急いで言う。

「智美ちゃん…」
「…佐伯さん」
里菜ちゃんと真希ちゃんが、不安そうに私の名前を呼ぶ。

「智美、大丈夫だよ!」
くるみが、不安を打ち消すように言う。